徳島でウミガメの卵を孵化させようとする少女、奈良の山奥で狼犬と出会う女性、北海道で隕石を探す人々など、土地に根ざした営みと科学の知見が交わる全五篇。人生に行き詰まった人々が、自然や時間の大きさに触れて歩み出す短篇集。
あらすじ
徳島でウミガメの卵を孵化させようとする少女、奈良の山奥で狼犬と出会う女性、北海道で隕石を探す人々など、土地に根ざした営みと科学の知見が交わる全五篇。人生に行き詰まった人々が、自然や時間の大きさに触れて歩み出す短篇集。
作品情報
受賞歴・映像化
- 直木賞:第172回(2024年下半期) 受賞

作者は伊与原新。新潮社から刊行された短編集で、2025年1月15日の選考会で第172回直木賞に選ばれた。理系の素養を生かした小説で知られる作者の、元研究者という経歴がよく語られる。
収録は5編。山口県の離島・見島を舞台に地質学者と萩焼の土を探す青年が出会う「夢化けの島」。長崎県長与町の役場職員が、空き家に灯りが見えるという通報で出向く「祈りの破片」。北海道遠軽町で廃止が決まった郵便局と隕石をめぐる「星隕つ駅逓」。奈良県吉野に移住した女性が、絶滅したはずのオオカミを追う「狼犬ダイアリー」などだ。
地学や自然科学の知識が土地の暮らしや人の悩みとつながって語られる。理科が苦手な人でも、科学が物語の邪魔にならない点が読みやすい。
短編集なので一編ずつ区切って読める。日本各地の風景に触れたい人や、静かで前向きな余韻が好きな人に向く。ただし、「祈りの破片」は原爆に関わる題材を扱うため、重く感じる読者もいるだろう。